Kirra NEWS  no.1


山で木を切る

山で木を切るのは丁度いい寒いさかりの11月〜2月頃が旬とされています。木が休眠状態で水分が少なく虫が入ったりしないらしいです。どちらにしろ夏やれと言われてもできない過酷な労働です。とはいっても木立の中に分け入るには楽しいことですし、弁当もうまいです。しかし木に鋸をいれる時はいつもいやなものです。なにかと言い訳を考えます。ティッシュペーパーをたくさん使う奴がもっと森林破壊をしているだとか。そのうち事はエネルギー問題だとか地球規模になって来ます。実際そうなんですが。

わたしの切るリョウブとかツバキはもともと樫や楢だとかがグングン伸びて来るとその影にいってしまい立ち枯れる運命なのです。ツバキは常緑のためか強いのですがリョウブはそのような木をよく見かけます。だからいいと言うのではなくて、もう少し落ち着いたら専門家の人に意見してもらい森にダメージを与えた分はなんらかのケアをしなければなりません。

C.W.ニコルという人がいます。小説家でエッセイスト、自然保護を標榜しているのに猟銃を持った写真が出ています。以前は変な人だと思っていたのですが近頃よく分かります。猟をする友人ができてお呼ばれに上がりますと本当に骨までしゃぶっていただきます。その人は羽根でフライを作ったり寝袋まで考えていたようです。無駄にはしたくないのです。その席で決まって出るのが環境破壊等の話です。最近、湖水の散弾による鉛
汚染は別として、新聞でも心ないハンターが悪さをした記事は時折見かけますが、彼らによって取りや獣が減ったというのはないでしょう。実は彼らも自然を大変気にしているのです。エスキモーやインディアンやきこりもそうであるように、殺生するのが本当はその大切さ、ありがたみをわかっているのです。

その林のすぐ近くに山主のオジイの家があります。薪でフロを焚いて残飯は畑の肥やしです。古い家でプラスチック等見あたりません。美しいなぁ、エコロジカルやなぁと思います。




クラゲに刺される


* サーフィンが好きで週末は海に行きます。クラゲの季節となりちくちくとやられました。蚊やダニにも強いほうでクラゲもわりと平気です。陸の人間が海で遊べるとは何とすばらしい事でしょうか。プカプカ浮きながら考えました。猛毒のプランクトンが世界中に大量発生して片足さえ水につけられない状況も考えられるわけです。この自然はなにか善的なもののせめぎ合いによって成り立っているのではないか。結構タフな何重もの安全装置があるような気がします。




てっぽう


てっぽうとは、矢張り鉄砲と書くのでしょうか。これは木材関係者の間ではカミキリムシの幼虫の食べた穴のことです。シオジやセンといった木に、直径1〜15センチほぼ真円の穴をあけます。しかし縦横無尽に走っているため板に挽くとその断面は楕円となったり、帯状の凹みとなります.あんまりボッコリ穴が明いているのでノカな感じで私は嫌いではありません。だから、てっぼうという感じです。

しかし土塊に出た原木を買い、それを挽いて床柱等にして木材商に卸す仕事をしている人達にとっては確かに鉄砲です。表面の穴より意外に内部か食われてないと大儲けできますし、その逆もあり得ます.これだけは長年の経験も当てにならないようです。それでも割れや席りほど嫌われていません。てっぽうだらけの板はそのまま欄間として取引されたりします。一度加工中にその幼虫に遭遇しました。なかなか巨大で卒倒しそうになりました。食べると結構いけるそうです。
*




プランニング


初期の頃はちょっとした花台程度の椅子を作っていました。技術も道具も材料もなかったからです。それでも安かったので結構売れました。でも生活できない額でした。なんとか付加価値を付けて高くする必要がありました。それは実用の椅子作りです。

一つは耐久性です。もともと花台でもすぐグラグラするものを売ることは気の引ける事でした。5万円の椅子でも新築の家が2回建つ程度もてば安い買い物です。残念なから私の製品か全てそこまでもつとは、使い方もありますし言い切れませんが。ただ先日、工業技術センターで組木の椅子をテストしてもらいましたが、ダイニングチェアの基準をクリアーしました.座に55キログラムの鉛を載せ、前脚を5センチ上げては落とす手を4000回繰り返します。本当に壊れたらもったいないのでB級品を使いましたが、全然問題なかったです。全体にしなるので衝撃を吸収するようです。ただ30年後の状態はまだまだ予測はできません。

二つめは座り心地です。無骨な椅子かすごく座りよいというのは大きなセールスポイントです。現在、一般の椅子と同等かそれ以上の座り心地を確保していますが、これも大変が深いです。ちょっと座るよりも長時の使用で疲れの少ないことを念頭にせいています。たとえば座椅子など、お尻が痛くなる位の固いクッションが腰に負担がかからないようです。ただ大きな切り株に腰をかけた時の安心感を考えますと科学的データだけでは何とも言えませんね。情緒的な話ではなく、人間のお尻はそれだけのセンサーをもっているのです。




木が好きですか

よくそう開かれるのですが別段そうではなくて仕方なくやっています。本当は世界中を旅行して暮らしたいです。もともと東京で工業デザイナーをしていたのですが、たまたまコンクールで受賞、アーチストを目指して帰郷して、すぐ挫折、教師をしましたが長くは続かず、商業デザイナーもしましたが高知では作品より付き合いが重視されどうも煮え切らないでいたところ、枝で椅子を作る方の作品を見てこれだと思いました。大きな可能性を感じました。それに家具や建築には以前より興味があり、テーブル等も自分で作っていました。伏線はあったようです。

何と言っても自分でデザインして製作し世に問える事は明快で健全です。これで生活できれば幸せ者です。鉄という素材も好きで実際使ってますが、木は一様でなく生きていますので、徐々に熟練し征服する楽しみがあります。まあわりと最近木は好きです。




犬のポチと猫のブチ

ポチはそんな感じの雑種の中型犬です。以前から私の愛車のトラックに、また乾燥のために積み上げた板に、オシッコをかけるふとどきものがいると思っていたのですが、その日はとうとう現場を目撃したのでした。怒りに燃えた私は追跡を始めました。首輪をつけていて飼い犬らしいのです。100メートル程尾行したところで、飼い主を見つけて「あんたの犬がオシッコしたんや。」ともがるのも滑稽だし、小走りでついて行くのもしんどいし今度は自転車にしようと思ったのでした。その板で、少し香るダイニングテーブルを作りましょうか。*

猫のブチは家具作りとは関係ありません。私の家の階段の踊り場ににいたす奴、これは猫だ。とても臭いのです。絶対にしばき倒すと思っていたのですが、そのチャンスは程なく訪れました。夕食の間に奴が作業場に侵入していたのです。しかし真っ暗な作業場で双方とも悲鳴をあげ、肝を冷やしたのでした。仇の猫との突然の出会いとはこのようなものです。




手作りということ

考えてみるに 「手作り」とは本当に曖昧な使われ方をしています。木工においても家具屋の広告によくそのコピーを見かけます。辞書によると「自分の手で作ること。手製。」と出ています。明快ですね。しかし現在は、量産品ではなく個人或いは小人数が一品ずつ製作したものというイメージか一般的ではないでしょうか。木製品は鉄やプラスチックと違って材料が均一ではないので手作りは大変理にかなっています。私の場合は「その材料で出来る適切な製品を最大の努力で製作すること」となります。最大の努力としたのはセンスはともかく技術はまだまだですので、「最高の技術で」とはならないのです。

たとえば私の座椅子では、座の部分の形がすべて1脚1脚違います。これは製材所で正取りされた板の幅が違うためで、これを全て同じにするのは簡単ですが5割増しのそつが出ます。手間は掛かりますがせっかくの木を無駄には出来ません。さらに各々の座板に合わせて外形を削り出していくのですが、ここでいい味か出るのも事実です。また力のかかる部分には、目の詰んだ部材をあてがうことも必要です。木工家の中にはテンプレートという型紙を使って生産成型する人もいます。それはそれで素晴らしい製品もあるのですが、私は退屈しそうでいやです。

丸テーブルでもコンパスどうりの土産品は円であってマンマルではありません。なにか冷たく表情がない感じがするでしょう。地球だって真円ではないのです。私は微妙に形を歪ませています。

*




板の話

よく製材所の隅で、ほこりをかぶった古い板を買って来ます。少々傷んでいますが、狂いが少ないのです。しみかあってもかまわず使います。自然の染色です。一部腐りがあれば埋木します。こうなるとむしろ新品の板を使った方が安く出来るかもしれません。しかしもったいないのです。もう少しすればパルプ行きかもしれません。事実そのために野積みされた板でも随分作りました。製材所のおじさんも後日その話をすると、タダでわけてくれたのに喜んでくれました。

今度は本当に腐りかけの樫(カシ)を買って来ました。すごい模様になっています。別に、生ものではないので匂ったり、ウジがわくのではありません。元々重くて、堅い木ですから十分な強度があります。そのうちローテーブルでも作ろうかと思っています。どんな木でも何かに成れるようです。




クルクル

誰も木がどんな風に上に向かって伸びているか気にとめたことはないと思います。私も最近まで気がつきませんでした。それは右回りの螺旋を描いて伸びているのです。コリオリの法則といって地球の自転と関係かあります。台風は左回りなのですが、それは上空から見下ろしているからです。竜巻もきっと右でしょう。

しかしこれは製作にあたって由々しき事です。イスの背柱には左右対称の木か必要ですが、右回りの螺旋を描いた2本の木は決して対称にならないのです。板にしても同じことです。ねじれた2枚の板を接ぎ合わしてテーブルを作る際、よし片方を裏返して互いに反発させて真っすぐにしようと裏返してみるとやっぱりおなじ方向に反っているのでガックリしました。まあなんとかやっている次第です。今度よく観察してみてください。

10本に1本は左回りがあるそうです。本当かなあ。でもまあカタツムリの例もありますから。南半球は左回りらしいです。どなたか詳しい方いませんか。

*





作り方

組木のイスの作り方はシークレットです。以前、木工の月刊誌か写真入りでその作り方を紹介させて欲しいと話がありましたが、なんで2年余りもかけて開発したノウハウを教えなければいかんのでしょう。もっとも大したことはないのですが。強いて言えばカンにたよらず、ちゃんとデータのでる方法を探すことです。

それでも元来おしゃべりなもので、ついつい口が滑ります。先日もログハウスを作っている友人に独自の治具を自慢していると、「それはこれとおんなし理屈やねえ。」とログビルダー必携の道具を見せてくれました。ちょっとガッカリですが結構自分の道具もいきつくところまでいってるなと一人で悦に入りました。

大型の工作機機とコンピューターを組み合わすとずっと楽に確実になりますが、1脚ずつしか出来ないし、センスもいるので投資に見合わないと思います。



≫ 次のナンバーへ